お稲荷さまは、おそらく日本中で最も広く信心されている神さまです。

全国の神社の3割は稲荷神社といわれています。

しかしそこに行ったときには、私たちは神さまそのものよりも、門の前に構えている一対の狐の像の方に、強いインパクトを受けたりします。

ここではお稲荷さまそのものだけでなく、狐やいなり寿司との関係まで、いくつかのエピソードに説明することにします。

お稲荷様は一体どんな神様なの!?

由来 狐 稲荷神社

お稲荷さまはもともと穀物や農業の神です。

しかし現在のお稲荷さまは本来の「稲の豊作をつかさどる神」という範囲を越えて、商売繁昌・産業興隆・家内安全・交通安全・芸能上達の守り神としても信心されるようになりました。

まさに万能の神さまといってよいでしょう。

全国の稲荷神社の総本宮は、京都の伏見稲荷大社で、主祭神は「宇迦之御魂神 (うかのみたまのかみ)」という名前です。

この神さまは、 神道では稲などの穀物の豊作をつかさどるとされています。

全国の稲荷神社の多くがこの「宇迦之御魂神 (うかのみたまのかみ)」を主祭神として祭っています。

しかし、稲荷神社によっては別の農業の神さまを主祭神としてお祭りしている場合もあります。

またお稲荷さまはいつも神社に祭られるとは限りません。

あまり知られていませんが「お稲荷さまをお祭りする寺」も存在しています。

これは、神さまと仏さまを一緒にお祭りした「神仏習合」時代の名残りです。

お稲荷さまとしてお祭りされる仏さまは何人かいますが、特に荼枳尼天(だきにてん)が有名です。

神さまであれ仏さまであれ、お稲荷さまの姿は、好々爺(優しそうな年を取った男性)や美しい女性の姿として描かれます。

決して狐の姿で描かれることはありません。

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なぜ稲荷神社は狐のイメージなの!?

稲荷神社というと、まず一対の狐の像をイメージする人も多いはずです。

しかし上記のように、お稲荷さまは、決して狐の神さまでも、狐の姿をした神さまでもありません。

それでも、狐の像はどの稲荷神社でも必ずといってよいほど見かけます。

こま犬のように鎮座している狐は、朱塗りの鳥居と共に、稲荷神社のシンボルといってよいでしょう。

狐は、そこに祭られているお稲荷さまの使いとして働いているのです。

このような存在を「神使(かみのつかい)」あるいは「眷属(けんぞく)」と呼びます。

これは、人間の思いを直接神に伝えるのは恐れ多いという考えから、特別に選ばれた動物(つまり眷属)を通してお願いしようとした、昔の習慣に由来します。

狐はあくまでも「神さまの使い」であって「ご祭神」そのものではありません。

しかし眷属である狐も神さまの一種として「命婦神(みょうふしん)」と呼び、やはり信心の対象とされることもあります。

狐がお稲荷様の使いになった理由とは?

稲荷神社の狐が神さまの使いであることはわかりました。

しかしどうして「狐」なのでしょうか?

いくつかの説があげられていますが、その多くは「稲作」に関係があります。

「稲」が「狐」のキーワードとなるわけです。

お稲荷さまは、もともと稲の収穫を守る神さまであったことが、「稲」の字が含まれていることからも推察できます。

たとえば、稲のような食物をつかさどる神をかつては「御饌津神(みけつがみ)」と呼びましたが、この呼び名にいつしか「三狐神(みけつがみ)」の文字をあてるようになったので、狐がお稲荷さまの使いになった、というような説があります。

また、農家の人たちは神さまが春になると山から降りてきて、稲を食べる野ねずみを食料とするので「田の神さま」となり、秋に稲の収穫が終わると、山に戻って「山の神さま」になると考えていたから、という説もあります。

そしてこの神さまの動きとそっくり同じ行動をするのが狐であるため、狐が神の使いとみなされるようになった、という説もあります。

「お稲荷さまの使いが狐である」という考えは、昔の人々が、稲が豊かに実ることと狐の存在を、関連付けて考えていた証拠だともいえます。 

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稲荷神社といなり寿司に関係はあるの?

由来 狐 いなり

稲荷神社と関係がありそうな食べ物に「いなり寿司」があげられます。

実際、いなり寿司はお稲荷さまへの代表的なお供え物のひとつです。

お稲荷さまには、他の神社には持っていかない「油あげ」や「いなり寿司」をお供えするのが良いとされています。

それは、お稲荷さまの使いである「狐」が大きく関係してきます。

いなり寿司はあぶら揚げを使っていて、そのあぶら揚げが狐の大好物だといわれています。

これは、狐は「ネズミのあぶら揚げ」が大好物であるため「油あげ」のつながりで、豆腐を油であげた「油あげ」が供えられるようになったという説が関係しているようです。

ただし、狐は肉食動物なので、大豆でつくられた油あげに関心を示すことはありそうにないのですが。

もっとも「油あげ」は日持ちがするので、お稲荷さまへのお供えに使われるようになった、というより単純な説も伝わっています。

どちらの説が正しいとしても、その結果、農家の人がお稲荷さまにその年に収穫したお米をお供えする時、狐が大好きな油あげにお米を詰めて供えるようになりました。

そこから「いなり寿司」という「油あげの一方を裂いて袋状にし、具を入れた酢飯を詰めたスタイルのお寿司が世の中に知られるようになったようです。

まとめ

「稲荷神社」の由来から、お稲荷さまと狐やいなり寿司の関係についてまで、説明をしました。

お稲荷さまのルーツは非常に複雑です。

もともとは農業の神さまで豊作をつかさどる存在だったのが、いつの間にか、商業や産業全般、ありとあらゆる現世利益を受け持つ、万能の神さまになりました。

しかも神仏習合の時代を経ているので「お稲荷さま」でありながら仏さまでもあるといった存在も、仏教のお寺に祭られています。

お稲荷さまがこれだけ複雑でふところの深い存在であるにもかかわらず、稲荷神社では、お稲荷さまの使いである「狐」の存在のほうが、むしろ私たちに大きなインパクトを与えます。

実際、「お稲荷さま」にはつきものの油あげやいなり寿司も、この狐の存在がなくては、語ることができません。

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