秋といえば、様々な実りが楽しめる美味しい季節でもありますよね。
柿や梨、そして栗などが木に実っている姿は、見ているだけでも豊かな気持ちになれそうです。
特に栗は、栗ご飯やモンブラン、栗きんとんなど、料理や洋菓子、和菓子といった様々なジャンルに使える秋の食材の代表選手の一つといってもいいのではないでしょうか?
今回は、この栗についての雑学あれこれをご紹介します。
目次
栗の漢字の由来とは!?
漢字は成り立ちによって象形文字、指示文字、会意文字、形成文字の四種類に分類されますが、栗の漢字はその中の象形文字に当てはまります。
象形文字とは目に見えるものの形を線でえがいた絵をもとに作られた漢字で、栗の漢字は一本の栗の木そのものを表しています。
古代の栗の漢字の起源になるものには、木の上にトゲが密生した実がついている様子が表現されているのですね。
栗の英語は「マロン」じゃないって本当!?
栗を使った洋菓子や飲み物などには『マロン』という名前が使われていますが、実は栗の英語は『マロン』ではないことをご存知でしょうか?
本当の栗の英語名は『チェスナット(chestnut)』といい、ナッツ類の一つとして考えられているそうです。
なぜ日本においては栗がマロンになってしまったのでしょうか。
これには実は『マロングラッセ』が関係しているのだというのです。
マロングラッセは紀元前から作られていたという記録のある、手間と時間のかかる伝統的な洋菓子です。
現在私たちが知っているマロングラッセは皮をむいた栗で作られていますが、本来は『マロニエ(marronier)』とよばれるトチノキ科の木に実る『マロン(marron)』が材料なのです。
フランスからこのお菓子が日本に伝わってきた頃、日本にはこのマロンが少なかったために栗で代用していたことから、日本においては栗がマロンであるという考えが浸透してしまったのですね。
ちなみにフランス語で栗は『シャテーニュ(châtaignes)』というそうです。
栗だと思って英語でマロンと言っても、外国の方に正しく理解してもらえないということですので、覚えておくといいでしょう。
栗きんとんが正月のおせち料理に入っている意味とは!?
日本で栗を使った料理といえば、栗きんとんが身近に感じられるかもしれませんよね。
栗きんとんはおせち料理でもおなじみですが、なぜお正月に食べられるようになったのでしょうか?
おせち料理は漢字では【御節】と書きます。
もともとおせちは、平安時代の頃から行われていた朝廷の『節会(せちえ)』の行事で、神様にお供えしたり食べられていた『御節供(おせちく)』という料理のことなのだそうです。
現在でいう1月1日の『元旦』、3月3日の『雛祭り』、5月5日の『端午の節句』、7月7日の『たなばた』、9月9日の『重陽の節句』に食べられていた『五節供』のひとつということになります。
これが後に『おせち』となり、現在のお正月料理を意味するようになったのですね。
おせち料理は重箱につめて重ねるのは、めでたさを重ねるという縁起かつぎの意味があるといわれます。
現在では三段重ねが主流ですが、本来は四段重ねが正式で、何段目に何を詰めるかにも決まりがあるそうです。
三段重の場合(詰め方の例)
- 一の重:祝い肴・口取り(前菜のような料理)
黒豆・栗きんとん・たたきごぼう・田作り・紅白かまぼこ・昆布巻き
- 二の重:焼き物・酢の物(メインディッシュになる料理など)
鯛・海老・数の子・紅白なます
- 三の重:煮物
煮しめ・筑前煮・里芋・蓮根・こんにゃく
それぞれの材料によって様々な意味や願いが込められているのが特徴で、詰め方は地方によって様々です。
主なおせち料理にこめられた意味合いについて
- 数の子・・・卵の数が多いことから子孫繁栄の願いをこめて
- 黒豆・・・黒は魔除けの色で、マメに暮らせるようにという願いもこめて
- 田作り(五万米・ごまめ)・・・田畑の肥料に使う片口イワシを食べて豊作を祈願
- たたきごぼう・・・瑞鳥(めでたいことの前兆とされる鳥)に見た目が似ている
- 海老・・・腰が曲がるまで元気にという長寿の願い
- 鯛・・・祝い事の定番であるめでたい縁起物
- 鰤・・・出世魚であることから出世を祈願
- 昆布巻・・・よろこぶの語呂合わせ
- 伊達巻・・・巻物ような形から学問などの成就を祈願
- 里芋・・・子宝祈願
- 蓮根・・・穴が開いていることから先見性のある一年を祈願
- くわい・・・大きな芽が出るため、出世祈願など
などさまざまです。
そして栗きんとんには、金運と勝負運という二つの願いが込められているといわれます。
栗きんとんは漢字では『栗金団』となります。
黄金の団子、つまり栗そのものを財宝に見立てることで、経済的な豊かさを祈っているといわれるのです。
また、見た目の美しい黄色の色合い自体も金運を呼ぶとされ、縁起物として重宝されているのですね。
また、栗は『勝ち栗』という言葉があるように、何事にも勝てる勝負運を持つ幸先のいい食べ物として好まれてきました。
特に武士にとっては縁起物で、出陣や祝い膳には必ず添えられていたのだとか。
いわゆるジンクスのようなものですね。
これが栗きんとんとつながり、おせち料理になったといわれます。
砂糖が貴重であった時代に、多くの砂糖を使って作る栗きんとんはまさに豊かさの象徴であり、それが武士の縁起物でもあった勝負運を願う栗の持つ意味合いと一緒になり、おめでたい料理として親しまれてきたことがわかりますね。
まとめ
いかがでしたか?
私たちが栗だと思っていた『マロン』は、英語では栗ではありませんでしたね。
『マロン』の本来の意味は、フランス語でトチの実のことでした。
フランスから渡ってきたマロンクラッセを日本で作る際、確保しにくかったトチの実の代わりに栗を使ったことから、日本語としては栗=マロンという認識が広まってしまったのが原因だということなのですね。
日本に多く存在する和製英語の部類として覚えておくと、勘違いがなくていいでしょう。
日本において栗料理としては、お正月にいただくおせち料理でもおなじみの栗きんとんが身近かもしれません。
おせち料理にはそれぞれ意味や願いが込められており、栗きんとんには金運や勝負運にちなんだ縁起物という位置づけがあるようです。
食べ物の持つ栄養や効能はもちろんですが、このような意味合いなども大切にして豊かな日々を過ごしたいものですね。