どうして男性はネクタイをするようになったのでしょうか?
ここでは、ネクタイの由来、さらに男性が首周りに布を飾った長い歴史について説明します。
さらに結び方の種類など、日常に役立つネクタイの話題も取り上げます。
ネクタイの由来について
ネクタイの直接の起源は、昔の貴族が首を飾るために巻いた「クラバット」という布です。
(フランスでは今日でもネクタイのことを「クラバット(cravate)」と読んでいます。)
しかし、このクラバット、貴族のファッションとして誕生したのではありません。
17世紀の始めごろパリにやってきたクロアチアの兵士が首に巻いていたリネンのスカーフがパリで大流行したのが始まりとされています。
このスカーフは本来、妻や恋人が兵士の無事を願って贈ったものです。
「クラバット(cravate)」という名称も、もともとは「クロアチア兵」という意味でした。
しかしクラバットは次第に意味合いを変えていきました。
貴族たちが紳士のたしなみとして身に着けるものとなり、今日のネクタイへと形を変えていくのです。
ネクタイの歴史とは!?
ネクタイを「男性の首周りを飾るもの」とみなすと、その歴史は大昔までさかのぼることができます。
世界で最も読まれているベストセラーである「聖書」にも、ネクタイのルーツのひとつとして「ヨセフの首飾り」が出てきます。
聖書(旧約聖書)には、数奇な運命を経てエジプトで国王に次ぐ第2の権力者に上り詰めたヨセフという男性の話が出てきますが、ヨセフが権力の座に付くときファラオから与えられる首飾りこそ、ネクタイの遠い祖先のひとつなのだという説があるのです。
また、東洋でも秦の始皇帝(紀元前259年 – 紀元前210年)の兵馬俑(へいばいよう、副葬品の一種)として発見された首に布を巻いた兵士の像も、ネクタイの遠い祖先であるとされています。
ただしこの布は、軍の指揮に従わなければならない兵士としての証であり、権力者の証明であったヨセフの首飾りとは正反対の意味を持っています。
とにかく、男性はさまざまな理由で首に布やアクセサリーなどを巻いたようです。
その極端な例は、16世紀から17世紀のイングランドやフランスの貴族が首に巻いた、ラフという巨大な襟型(えりがた)です。
彼らはタブレットと呼ばれる上着を着て、大きな円盤状の襟を飾りのために身に着けました。
この襟型、つまりラフは白い布で作られていて、厚さはときには十数センチメートルもあり、型崩れしないために支えが必要だったそうです。
そして、17世紀にヨーロッパで起きた30年戦争(1618年 – 1648年)の頃、前記のようにパリにやって来たクロアチアの兵士たちが首に巻いていたスカーフが人々の心をつかみ、クラバットという名で広まって行き、今日のネクタイ文化へとつながって行きました。
ネクタイの結び方の種類について
ネクタイの結び方は数十種類あるといわれています。
しかし、そのなかで最も基本になるのは、
- 「プレーンノット(Plain Knot)」
- 「ダブルノット(Double Knot)」
- 「ウインザーノット( Windsor Knot)」
- 「セミウインザーノット(Semi Windsor Knot)」
の4種類だけです。
プレーンノットは最もシンプルな一重結びです。
結び目が小さいので、首元がすっきりと見えます。
プレーンノットの結び方は、次のとおりです。
- 大剣が小剣より長くなるようにして、首の右側に垂らし、小剣の上に重ねます。
- 大剣を小剣に巻きつけるように1周半回転させて、小剣の後ろに持っていきます。
- 大剣を首元にできたループに下から上へと通します。
- 結び目の表地のすぐ内側に大剣を上から通し、結び目を整えます。
ダブルノットは大剣を二重巻きにする結び方です。
そのためプレーンノットより少し結び目が大きくなります。
細めのネクタイを締めるときに向いています。
ダブルノットの結び方は、次のとおりです。
- 大剣が小剣より長くなるようにして、首の右側に垂らし、小剣の上に重ねます。
- 大剣を小剣に巻きつけるように2周半回転させて、小剣の後ろに持っていきます。
- 大剣を首元にできたループに下から上へと通します。
- 結び目の表地の内側に大剣を上から通し、結び目を整えます。
ウインザーノットは、正統派イギリス好きスタイルの結び方です。
結び目はここで取り上げた4つの結び方の中で一番大きくなります。
しかし、型くずれしにくいきれいな三角形の結び目ができ上ります。
ウインザーノットの結び方は、次のとおりです。
- 大剣が小剣より長くなるようにして、首の右側に垂らし、小剣の上に重ねます。
- 大剣を首元にできたループに下から上へと通して、右側に出します。
- 結び目の後ろをくぐらせて、大剣を左側に移動します。
- 大剣をループの上から下へ通して左側へ出します。
- 結び目の前から大剣を右側へ移動し、下から上へ向かってループに通します。
- 結び目の表地のすぐ内側に大剣を上から通し、結び目を整えます。
セミウィンザーノットは、結び目が中くらいの三角形になります。
利用範囲が広い結び方といえます。
セミウィンザーノットの結び方は、次の通りです。
- 大剣が小剣より長くなるようにして、首の右側に垂らし、小剣の下に重ねます。
- 大剣を首元にできたループに下から上へと通して、左側に出します。
- 大剣を左側から右側に移動し、下から上へ向かってループに通します。
- 結び目の表地のすぐ内側に大剣を上から通し、結び目を整えます。
酔っぱらいが頭にネクタイを撒くのはどうして?
宴会では、酔っぱらいが頭にネクタイをまく様子を見ることがあります。
まるで、酔っぱらいのトレードマークのようです。
ではなぜ酔っぱらいはこのような行動に出るのでしょうか?
本人たちの意見は、いろいろです。
彼らによると、酔っ払って体がほてって暑く感じるのでネクタイをゆるめることが始まりです。
この状態は返ってだらしないので「今日は無礼講で・・・」ということで、頭に巻くという次第です。
なぜ頭に?というと次のような意見が続きます。
- 「ネクタイを外すとどこかに忘れてしまう」
- 「ネクタイはしわになりやすいし、頭に巻けば食べこぼしのシミが予防できる」
- 「仕事の象徴をはずして頭に巻くと、最大のストレス発散になる」
- 「普段は首につけているものを頭に巻くだけで、すっかりお祭り気分になる」
- 「ハチマキの代わり、ハチマキは日本人にとって昔から頑張りの象徴」
いずれの意見も、アルコールが入って気分がハイになった状態を説明していることは、間違いないようです。
まとめ
ネクタイはただの長い布なのに、男性の装身具としてとても長い歴史を持っています。
現代のネクタイは一昔前ほど装飾性の高い存在ではなくなっていますが、ビジネスマンにとって、個性を示す重要なアイテムとしての役割を果たし続けています。