どうしても眠れないとき、そしてどうしても眠る必要のあるときに「羊が1匹、羊が2匹…」と数えてみた人も多いでしょう。
しかし羊を数えることで、本当によく眠れた人はどれくらいいるでしょうか。
ここでは、話題になっている「羊」という漢字の由来と、なぜ羊を数えることが眠るのに役立つのか、それは本当に役立つのか?ということについて、その由来を説明します。
羊の漢字の由来とは!?
羊は、中国では昔から家畜として大切に扱ってきました。
3,000年くらい前には、中国の北方の羌(きょう)という遊牧民族(今日のチベット民族の先祖にあたる)が、羊を放牧していたといわれています。
彼らにとって、羊は大切で美味しい栄養源であり、儀式の際の貴重な生贄(いけにえ)にもなりました。
もちろん毛皮の存在も忘れてはなりません。
羌の影響を受けて、華北や華中の漢民族も、羊の肉や毛を利用していました。
中国の人々にとって、羊は当時から大切な家畜だったのです。
そのような理由で「羊」という漢字の由来は、羊そのものの顔の形を表現した甲骨文字にさかのぼります。
今日の「羊」の漢字をよくみると、羊の「つの」の特徴がどこのなく残っていることが、わかるでしょう。
羊を数えると眠れると言われる理由、由来とは!?
眠れないときは、羊を数えたら良いといわれます。
羊を英語に直して「シープ(Sheep)」について考えるようにすると、その考えの由来がわかりやすくなります。
いくつかの説があるのですが、いずれの場合も「羊を数える」入眠法は、英語圏からやってきたものだということを、前提にしているからです。
「ワン・シープ、ツー・シープ、スリー・シープ…(One sheep, two sheep, three sheep…)」と数えてみます。
「ワン・スリープ、ツー・スリープ、スリー、スリープ(One sleep, two sleep, three sleep…)」と響きがどこか似ていませんか?
「スリープ(Sleep)」とは「眠り」のことなので、「ワン・スリープ、ツー・スリープ…」は、「ひと眠り、ふた眠り…」ということになります。
つまり、”Sheep” と”Sleep” というふたつの単語の間で、言葉遊びをしているわけです。
もちろん、言葉遊びだけで眠れるわけではありません。
しかし英語で ”One sheep, two sheep…” と唱えているうちに、頭が “One sleep, two sleep…” と誤解して、その暗示効果で眠たくなって行く、という可能性は、確かにありそうです。
別の説明として、英語圏(特にイギリス)の人々が羊に対して描くイメージが関係している、という説があります。
英語圏の人々にとって、羊は身近な存在で、緑の草原でゆっくりと草を食んでいるという、牧歌的なイメージにつながっているから、というものです。
頭の中で羊を数えているうちに、のどかな光景に引き込まれて行って、興奮して眠れない頭脳も次第に落ちついて、眠りに落ちていく、というものです。
あるいは「シープ(Sheep)」という英語の発音そのものに、秘密があると考える説もあります。
”Sheep” は息を吐くように発音する単語ですが、その発音によって複式呼吸がうながされて、眠りに入りやすくなる、という説です。
つまり ”Sheep” という単語を繰り返すことによって、呼吸が複式呼吸にだんだん近くなり、自律神経がリラックスして眠りに入りやすくなる、ということです。
実は日本人には効果が無い!?
以上の説明のすべてから「羊が1匹、羊が2匹…」と数える方法は、日本人にとってあまり役に立ちそうもない、ということが結論として得られます。
仮に羊を数えるにしても、英語で「シープ(Sheep)」と言う必要があるようです。
”Sheep” を ”Sleep” と頭の中で誤解する説にしても、”Sheep” が腹式呼吸へと導いて行く説にしても、「シープ」ではなく日本語で「ひつじ」と数えている限り、全く意味を成しません。
仮に日本人の私たちが「ワン・シープ、ツー・シープ…」と唱えても、よほど英語に堪能でない限り、たとえば「あれ、49は英語でなんと言うのかな?」という疑問がいつも頭に浮かぶことになるので、それを無理して英語で唱え続けても、頭が混乱して安眠には役にたちそうもありません。
また「羊」が牧歌的なイメージを連想させる、というのも英語圏の人たちには当てはまるかもしれませんが、羊になじみの薄い私たち日本人にとって、あまり意味がないと考えられます。
実は、羊あるいは “Sheep” をただ「数え続ける」という単純作業を繰り返すことによって、頭が落ちついてぼんやりとなり、眠りに入ることができる、という説もあります。
ただしその場合は「なぜ羊なの?犬とか猫とか牛とかやぎではいけないの?」という疑問が生じてきます。
日本人の場合は、無理して「羊が1匹、羊が2匹(One sheep, two sheep)…」と数えるより、それより効果的な別の方法を試してみた方が良いかもしれません。
たとえば、リラックスできる美しい景色(山、滝、田舎の光景など)を思い浮かべると、「羊を数える」場合より短い時間で、眠りに落ちることができるそうです。
その他にも、次のような入眠法が挙げられます。
- 「就寝1時間前にぬるめのお湯で15分程度入浴する」
- 「枕の高さやベッドマットレスを好みの高さに調節する」
- 「ゆっくりと腹式呼吸を繰り返す」
- 「ノートを用意して、眠る前に気にかかる心のモヤモヤを書いて吐き出してしまう」
- 「ホットミルクを飲む」
- 「ストレッチをして体をリラックスさせる」
- 「心がリラックスできるような音楽を聴く」
間違ってもテレビを見たり、スマートフォンやPCなどのデジタル機器をいじったりしないようにしてください。
返って目が冴えてしまって再び寝付くことが難しくなります。
もし、あまりにも眠れない日々が続くのなら、よく生活習慣を見直すようにしましょう。
正しい生活習慣を身につけることが、寝付きやすくする最良の方法です。
まとめ
「羊」という漢字の由来は、3,000年前までさかのぼること、そしてその当時から「羊」は大切な家畜として扱われていたことが、以上の議論よりわかりました。
そして「羊を数える」とよく眠れるという説は、「羊(Sheep)」と「眠り(Sleep)」の単語がどこかよく似ている英語圏だけに通用するもので、私たち日本人の頭の中では、羊を数えても、寝付きを良くする効果はほとんどないと考えられることも判明しました。
私たち日本人が気持ちよく眠りにつくためには、地道に睡眠環境を整えるようにすることが、必要なようです。