「おかめ」とひょっとこは、昔から日本では、縁起物として扱われてきました。
「おかめ」は、ふくよかな女性の顔で、どこか優し気な表情をしていますし、「ひょっとこ」はとても滑稽で、まるで人を笑わせるような、面白い顔をしていますね。
その表情から、確かに縁起物として言われてもおかしくないというか、決して悪い方向には見えないイメージがあります。
ちなみにそんな「おかめ」と「ひょっとこ」ですが、よく対になって扱われていることが多いと思いませんか?
夫婦だからでは?と思っている方も中には多いはず。
昔から見かけることの多いモチーフですから、ちょっと気になりますよね。
今回は、「おかめ」と「ひょっとこ」の関係性などについて、ご説明していきましょう!
「おかめ」と「ひょっとこ」はどんな関係なの?
ほぼほぼ対で扱われることのある「おかめ」と「ひょっとこ」ですが、夫婦なのではと思われがちです。
でも実はこの二人、夫婦ではありません。
神楽では対の役ですし、二人とも「家族円満」などもご利益を持っていますし、いろいろなグッズでも次いで扱われるので、つい思い込みがちですよね。
ですが、別に夫婦という訳でもありませんし、何か神話や逸話で関係性があるわけでもないよう。
これは完全に後付けのイメージと設定…と考えてもよさそうです。
とはいえ、いつもこの二人のおかげで、神楽などでも賑わい盛り上がるのですから、
良きパートナーにような存在なのでしょう。
伝統芸能界のバッテリーとでもいえましょう。
おかめとは!?意味や由来について
「おかめ」とはいったい何なのでしょうか?
「おかめ」は、日本に古くから存在している、日本の面のひとつのことです。
ふくよかでふっくらとした頬、広めのおでこ、優し気に微笑む表情が特徴的ですよね。
シーンなどによって、呼び方は様々で、よく聞く「お多福(おたふく)」ですとか、「お福(おふく)」、「乙御前(おとごぜ)」などと呼ばれている場合もあります。
呼び方によって用いられるシーンが違うのも、面白いんですよ。
例えば、「おかめ」(お亀・阿亀)と呼ぶ場合は、神楽(かぐら)といって、神さまへ奉納するための歌や舞を行う際に、おかめの面が使われます。
「乙御前(おとごぜ)」は、狂言という、日本に昔から存在する古典芸能(一般市民の日常生活や、人間の滑稽さを題材にした喜劇)に用いられたり。
「お福(おふく)」は、文楽人形という、浄瑠璃(日本の伝統芸能)を人形で演じる劇で用いられたり。
「お多福(おたふく)」は、福を呼び込む顔の女性を指したり。
物自体は同じものなのですが、いろいろなシーンや場面によって、呼び方が変わるんです。
なんだか不思議ですよね。
あるいは、シーンによって認識がごちゃごちゃになってしまう事を避けるために、あえて呼び方を変えている、というのもありあえるかも。
おかめの由来は、実は「アメノウズメ」という神さまだったて、知っていましたか?
「アメノウズメ」は、踊りや芸能の神様です。
名前を聞いてもピンと来ない方もいるかもしれませんね。
でもきっと神話を聞くとなんとなくわかるはず。
「アメノウズメ」が登場するのは、日本神話「天の岩戸」です。
岩戸の中に引きこもってしまったアマテラスを、踊りや歌を披露し、宴を開いて、結果アマテラスを中から呼び出すことに成功した……というストーリーですね。
彼女は日本最古の踊り子ともいわれています。
ですから、おかめなどが用いられるのも、舞や踊りなのですね。
また「おかめ」という名前の由来は、室町時代の巫女の名前からとられた、という説がありますが、これは元々「アメノウズメ」本人が、神楽などを行うための女官…今でいう巫女という立場であったからともいわれています。
関係ないようで、実はちゃんとつながりがあるんですね。
「おかめ」も縁起物であると冒頭で説明しましたが、ご利益としては「芸能上達」「縁結び」「夫婦円満」などがあげられます。
由来や成り立ちを聞く限りでも、とても縁起の良いものであると連想できますね。
おかめとおたふくの違いって何!?
では「おかめ」と「おたふく」とは、いったい何が違うのでしょうか?
先ほど、用いられるシーンによって違うといいました。
その他にも、見た目の違いがあるんだそう。
「おかめ」は、 顔を頬の張り出した形が「瓶(かめ)」に似ている、という理由から名前をとったという説もあります。
瓶とはいわゆる壺のようなものですね。
昔はこれに水や食料をため込み保管していました。
確かに壺の形を見る限りでは、おかめの面に似ていますものね。
「おたふく」と言うのは、漢字で書くと「お多福」となりますね。
もうこれは読んで字のごとく「多くの福を呼び込む顔」という意味が込められています。
とはいえ、これはとても美人、という意味でなかったようですが…。
あくまで、福を呼び込む人相である、という意味合いだったのでしょうか。
また、芸能が確立していった時代にはいると、呼び方の違いは芸風の違いとなり、現在のような扱い方が当たり前になってきました。
元は、同じような顔の造りを表現していただけであることも分かりますね。
つまり、元々は「おかめ」も「おたふく」も同じような人相を指していたということです。
ひょっとことは!?意味や由来について
「ひょっとこ」は、口をとがらせた顔がとても特徴的ですよね。
手拭いをほっかむり状や、鉢巻き状に、頭に巻いているのも印象に残っているのではないでしょうか。
名前の由来は、そのとがらせた口から、竈(かまど)の炎を竹筒で拭いて燃え盛らせる「火男(ひおとこ)」からきているという説や、口がまるで徳利(とっくり)に似ているが本物ではないぞ、という意味で「非徳利(ひとっくり)」と言われていたのがなまった、という説があります。
その火を吹いて、という点から「家族円満」のご利益があります。
なんにせよ、名前の由来はそのとがった口のようですね。
「ひょっとこ」は、おかめと同じように、舞楽などの日本の伝統芸能に用いられていました。
おどけたり滑稽な役をしていたのが、神楽の道化に徐々に移行したことで、現在の「ひょっとこ」になったんだとか。
その頃から、「おかめ」と対で場を賑わせていたんですね。
まとめ
いかがでしたか?
普段何気なく目にしていたり、聞いたことのある「おかめ」と「ひょっとこ」。
由来もさることながら、関係性なども、ちょっと意外な面がありましたよね。
日本の伝統芸能である、舞楽や浄瑠璃など、古来から親しみのあるお面たちです。
きっとこれからも見かけることがあると思いますし、縁起物としてグッズ化されているので、なんとなく手に取るなんてこともあるかも知れません。
そんなときは「そういえばおかめは…」「ひょっとこって確か…」と、ちょっと思い出してみてほしいです。
そうして、日本独自の伝統に触れる瞬間を作れたら、素敵ですよね。