1954年11月にゴジラの第1作が公開されました。
それからほぼ65年経って、ゴジラはさまざまな伝説を作り上げつつあります。
ここでは、「ゴジラ」の名前の由来を中心に、そうした新しい伝説のいくつかを、紹介することにします。
目次
ゴジラの意外な名前の由来とは!?
「ゴジラ」という響きは、聞くだけでいかにも強そうな感じを受けます。
「ゴジラ」という名前はいったいどのようにして付けられたのでしょうか?
いくつかの説があるようですが、1950年代はじめのことなので、それぞれの説に尾ひれがついたりして、どれが本当でどれがそうでないかが分らなくなっています。
その中で、最も有力な説として一般に通用しているのは、「ゴジラ」は、「ゴリラ」と「クジラ」を組み合わせた造語ある、という説です。
「ゴリラ」の力強さと「クジラ」の大きさにあやかったのです。
この説をさらに裏付けしているのは、次のような一種の都市伝説です。
第1作のプロデューサー田中友幸氏が、当時東宝演劇部にいた「クジラ」こと網倉志朗(後の東宝演芸部部長)氏のことを聞きつけました。
そして、彼の顔立ちが「ゴリラ」のようで好きな食べ物が「クジラ」だということを知って「ゴジラ」と「クジラ」を組み合わせることを思いつき、「ゴジラ」が誕生した、というものです。
(ただし、以上の話題に関しては、円谷英二監督本人が、1962年4月の毎日新聞夕刊で「ゴリラ+クジラ=ゴジラ」説を「あとからのこじつけ」と言い切っています。)
ゴジラの漢字表記「呉爾羅」の意味とは?
ゴジラは「呉爾羅」と漢字でつづることが可能です。
この漢字がはじめて使われたのは、第1作でゴジラが初めに出てくる大戸島(架空)に伝わる、伝説の怪物の名前として、です。
その怪物 は海の魚を食い尽くし、海に食べ物がなくなると陸に上がって人間を襲うというとんでもない存在です。
昔の大戸島では不良が続くと、生贄(いけにえ)として若い女性を海に流していた、ということになっています。
大戸島にはその怪物についての古文書が残っていてそれに「呉爾羅」という表記がありました。
そこでそれにちなんで登場人物のひとり、古生物学者の山根博士が「ゴジラ」とこの怪物に名前を付けたことになっています。
この伝説の設定は第1作から1975年公開の第15作「メカゴジラの逆襲」まで適用されました。
また2016年公開の第29作「シン・ゴジラ」では、怪獣の存在に気づいた牧悟郎博士の出身地が大戸島で、そこの伝説の海神の名前である「呉璽羅」から、怪獣の名前を命名しています。
第30作から第32作でも大戸島と「呉璽羅」の伝説は、背景として利用されています。
ただし最初にこの漢字が使われたのは、映画の中ではありません。
第1作の撮影の無事と映画興行の成功を祈願する修祓式(しゅうばつしき)のときです。
そのとき読まれた祝詞(のりと)の中で、ゴジラに「呉爾羅」という漢字を当てたそうです。
ゴジラを英語で書くと「Godzilla」の意味とは?
ゴジラをローマ字表記にすると「GO-ZI-RA」あるいは「GO-JI-RA」となります。
それなのに、なぜゴジラの英語表記は「Godzilla」となるのでしょうか?
「GO」と「ZI(あるいはJI)」の間に「D」を入れる理由は「God(神)」に通じるからです。
欧米、特に英語圏の人々にとっては、わざと「D」を入れるだけで、ゴジラという存在に「唯一の存在」という認識と共に、無限の力強さを感じるからなのです。
ただし後半の「-ZILLA」という部分で、なぜ「R」ではなく「LL」というつづりを使ったのかは、残念ながら何も情報は残っていません。
しかし、1954年公開の第1作をアメリカで公開したときのタイトルが、既に「Godzilla, King of Monster」だったそうです。
そのため、「Godzira」より「Godzilla」の方が、前記の「神」のイメージに加えて、欧米人にとって発音しやすく強そうに感じてもらえると、当時東宝で、英語のタイトルを作成した人が判断したのだと推測できます。
ちなみに英語の「Godzilla」の発音は「ガッズィーラ」です。
「ゴジラ」ではありません。
ゴジラはいつ誕生したの!?
そもそも、このゴジラという怪獣は、いつごろ誕生したのでしょう?
ゴジラの第1作が公開されたのが1954年11月3日なので、ゴジラというキャラクターが正式に誕生したのは、この日であるとみなすことができます。
しかしこの第1作で、ゴジラは「ジュラ紀(1億9,960万年くらい前から1億4,550万年くらい前)から白亜紀(1億4500万年くらい前から6600万年前)にかけてごくまれに存在していた」生き物の子孫であると設定されています。
これに従うと、ゴジラの誕生日はいつごろになるのでしょうか?
しかも、ゴジラの設定はその後の作品ごとに、シリーズの必要性に応じて、変更が加えられてきました。
シリーズの途中(「 ゴジラvsキングギドラ」(1991年公開))で、ゴジラの先祖になる恐竜のゴジラザウルスが突如として設定に加わっています。
あるいは、ゴジラのことを「太平洋戦争で死亡したすべての人間の怨念の集合体」と説明している映画(「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(2001年公開))もあったりします。
そのため、ゴジラが、映画の中でいつ誕生したかを正確に特定するのは、事実上不可能です。
シン・ゴジラの名前の意味とは!?
「シン・ゴジラ」は2016年に公開され、大ヒットとなったゴジラ・シリーズの29作目です。
ここでは、ゴジラの名前の設定(漢字で「呉爾羅」と表記すること)など、ある部分の設定は1954年公開の第1作を生かしている部分もありますが、オリジナル作品からは完全に独立した話になっています。
ストーリーが進むにつれて形態が変化するゴジラと日本の官僚機構の対決、といった内容は 、荒唐無稽なようでありながら妙にリアリティが感じられる質の高い作品に仕上がっていました。
ただ、この「シン・ゴジラ」というタイトル、ファンの間ではいろいろ議論をよんでいるようです。
なぜわざわざカタカナで「シン」と付けたのか?という疑問です。
「新ゴジラ」でよかったのではないでしょうか?
あるいは英語で「ニュー・ゴジラ・ストーリー(The New Godzilla Story)」と題名を付けても、ハリウッド映画みたいで面白かったかもしれません。
しかしこの「シン」というカタカナ、実は単なる「新」にはこだわらないという意味が込められているのです。
「シン・ゴジラ」という題名は、この作品の監督である庵野総氏のアイデアで付けられました。
庵野監督は、この「シン」というカタカナを通じて、見る人にさまざまなことを感じてもらいたかったようです。
「新」でも「真」でも「神」でもかまいません。
他の漢字でもオーケーで、正解といえるものはないそうです。
したがって、新しいゴジラのストーリーという意味の「新ゴジラ」でなくて、たとえば「本当のゴジラのストーリー」という意味の「真ゴジラ(The True Godzilla Story)」でも、「怒りの神ゴジラ」という意味の「神ゴジラ(Godzilla, the God of Anger)」であってもよいのです。
「シン・ゴジラ」の「シン」には無限の可能性が含まれています。
まとめ
名前の由来を中心に「ゴジラ」に関する話題をいろいろと紹介してきました。
ファンにとってはいろいろと興味深い話題が詰まっていますが、紙に書かれた資料は残っていません。
1954年(第1作公開当時)のことなので、当時のことを知っている人も少なくなっており、聞き取りをすることも、もはやかなわない状態です。
しかし、たとえば「ゴリラ+クジラ=ゴジラ」説のように、もはや定説化しているものが多くあり、興味深いところです。